著作権に関する事項について、文化庁等の発表を受け、加筆・修正しました。「オンライン授業で用いる教材」の内容をご確認ください。
今回のテーマは「オンライン授業」です。昨今のコロナ禍を受け、これまで日本はICT化について、表向きは積極的なように見せつつも実際は遅々として何も進んでいなかった状態が露呈しました。
さて、これから、このコロナ禍がいつ収束するのか、もしくは収束しないのか正直誰にもわかりません。ただ、確実に言えることは、
「今後、二度とこのようなことはない!」
なんてことは絶対にない!
ということです。
また、感染症に限らず、様々な状況下で学校に行きにくい子や行けない子、その他前向きな可能性も含めオンライン授業の秘めた可能性については教師として考えていく必要があります。
自治体によってはすでに取り入れておりますし、みなさんの自治体でも導入の話が聞こえなくはないでしょう。
さて、今回はそんなオンライン授業について、実際、明日から急にあなたの所属する教育委員会や学校長から「全クラスオンライン授業を配信します」といったようなことが発表されないとも限りません。
そこで、オンライン授業を行うとして考え得る課題と利点など、授業内容を展開するにあたって考えておきたいことをまとめました。ちなみにオンライン授業の可能性については以前に触れている記事がありますので、是非ご覧ください。
オンライン授業を行うツール
まず、オンライン授業を行うにあたってどのようなツールを用いるかですが、公立学校の場合は担任にはその選択権がない場合が多いかと思います。
ZOOMやSkype、LINEなど様々なテレビ電話機能付きアプリケーション(もしくはテレビ電話が主のアプリケーション)が話題になっておりますが、どれが自分の環境で使えるかどうかは教育委員会や学校長らとしっかりと話し合いましょう。
先生方はあくまで公務員(公立学校教員を対象に書いてます)ですので、自治体の情報規定等は遵守するべきです。
個人的な意見を述べておくと、アプリの選定は
- 全生徒の所有するデバイスで動くこと
- 機能の豊富さよりシンプルさ
- セキュリティ
かと思います。
1.全生徒の所有するデバイスで動くこと
インフラの整備は何より重要です。繋がれないんじゃ無意味なんです。
「Windows限定」とか「iPhoneは使えません」といったサービスは論外です。(でもある程度古いバージョンは切り捨てましょう。限界はあります)ソフトウェア業界ではクロスプラットフォーム化が進んでおり、デバイス依存、OS依存のソフトウェアは激減しています。
国は一人一台にデバイスを配付などと言っておりましたが、デバイスはどんどん進化し、バージョンアップしていきます。また、デバイスとはツールですので、一律に配付することが人々の生活に向上をもたらすとは限りません。すでに自前でもっていて、そのツールに非常に慣れ親しんでいる子どもからすればむしろ不慣れなデバイスを授業のためだけに使わなければならずストレスになるかもしれません。デバイスを配付するより助成金にしたほうがとか思いますが、政策については本義ではありませんのでこのくらいで。
2.機能の豊富さよりシンプルさ
2については一見、いろんなことができたほうがいいように思えます。しかし、ただ「できる」だけは反って操作性を損ない、使い物にならないケースがほとんどです。
特に、行政の思考上「使いやすさ」つまり「ユーザビリティ」より「多機能さ」といった「できる」が何個あるかが選考の基準になりやすいため、学校に取り入れられてきたあらゆる電子デバイスやソフトウェアは「確かにできる…けど…」といった製品が多く見受けられます。
これでは本末転倒ですよね。また、シンプルでもしっかりとしたツールはユーザー側が新しい使い方を発見し、もともと想定されていた使い方が拡張されていくという点もソフトウェアの面白いところであり、人のもつ可能性でもあると私は思います。
例を挙げると、Twitterというのは140文字のみでつぶやき、ひたすら時系列に様々な人のつぶやきが流れ、そのつぶやきに対して「いいね」と「リツイート」ができるだけのシンプルなUI(ユーザーインターフェース)です。(もちろん、今は他にも付加機能はありますが、基本機能はこれだけです)
しかし、たった140文字の世界に魅了され、SNSとして大流行しました。さらにInstagramは140文字を写真に置き換えたものと言えるかもしれません。これらはコミュニケーションツールですので、アレがデキるコレがデキる。よりも誰でも息を吐くように手軽に使えるからこその可能性を広げてきたわけです。
オンライン授業において、必要な事は「みんなが使えて」「同時につながれて」「映像と音声でコミュニケーションがとれる」が必要十分機能でしょう。
欲を言えば「連絡帳に準ずるツール」や「チャットでもコミュニケーションがとれる」なども欲しくなるでしょう。しかし、多くを望むべきではありません。確実に使いにくい製品ができあがってきます。もちろん稀に素晴らしいものも登場しますが、結局どれも一長一短であることが多いと思いますし、機能が多ければ多いほど、人によって好き嫌いの乖離が大きくなります。
例えば私は個人的にZOOMの映像通信は使いやすく有用と考えますが、ZOOMのチャット機能はお粗末だと感じています。Skypeは音質が良いと思いますが、連絡先の共有が手間です。などなど、それぞれに一長一短はあるのです。しかし、どれも「みんなが使えて」「同時に繋がれて」「映像と音声でコミュニケーションがとれる」という点においては水準はクリアしていると言えるのではないでしょうか。
3.セキュリティ
最後に3についてです。これは実は難しい問題で、ソフトウェアとしてセキュリティは非常に重要なポイントであることと、公教育、ひいては行政が提供する物としてセキュリティの担保は必須です。特に学校は個人情報を扱う場ですのでセキュリティというワードはとてもシビアでしょう。
ただ、これは公言してしまうと批判殺到な気もしますが、セキュリティにおいて「絶対」はあり得ません。また、セキュリティ神話なるものもあります。例えばセキュリティ対策ソフト(ウイルスバスターなど)を必須にしている企業や官公庁も多いですが、昨今ではセキュリティソフトそのものがセキュリティホールだという論調もあります。これについては話が長くなるので割愛しますが、要は「セキュリティの完全な担保は難しい」ということを念頭に置いてオンラインのテクノロジーを活用するということが重要だと考えます。
ZOOMもセキュリティ云々で話題になっていますので、官公庁としては採用しにくい背景にもなっているでしょうね。でも現状ZOOMほど簡便なシステムもないんですよね。
オンライン授業におけるセキュリティ意識については後述します。
以上のことから、もしあなたにオンライン授業のためのツールの選択権があるのであればみんなが簡単に使えるという点を重視して採用してみてください。
また、与えられたものを使う場合でも1番重要なポイントは「映像と音声をリアルタイムで複数人で共有するシステム」というところにフォーカスをあて、他の機能は使いやすそうな範囲で使う。ということにとどめましょう。なんでもかんでも使えばOKというものではありません。自分の感性を信じることも人として大切なことだと思いますよ。
オンライン授業で用いる教材
著作権の問題
オンライン授業を行うにあたって、1番理解しておかなくてはならないポイントは扱う教材についてです。「授業」を行う以上、必ずといって良いほど「教材」がつきものですが、普段学校教育下ではこの「著作権」が特例的に非常に緩やかに使えるようになっていることはご存知かと思います。しかし、オンライン授業になるとその特例は一切なくなります。
一応、文化庁は権利者団体に対して学校教育の範囲内であればオンライン授業でも特例を認めてもらう方向で働きかけてはいるようですが、難航しているようです。また、今後なんらかの答えが出たとしてもオールOKはあり得ないことと、オンライン授業はデジタルで記録が残るため、ちょっとの不正も揚げ足取りに使われやすいというリスクを考慮しておきましょう。
そして、この著作権についてですが、実は「教科書」も著作物にあたるということが学校教員の意識には薄いのではないでしょうか。それもそのはず、他の著作物と違って、教科書は学校の外で使われる事例が少ないため、校内では平気でコピーしてますよね。それに、普通のお店に売ってないから本屋で買える本とは感覚が違うんです。
でも、それ、錯覚です。
教科書も立派な著作物であり、基本的に他の書籍との取り扱いは変わりません。
このことはきちんと知っておきましょう。
2020年4月、コロナ禍を受け手の緊急施策として、文化庁より臨時の対応がありました。平成30年改訂の著作権法が本年4月28日より施行され、「授業目的公衆送信補償金制度」の範囲内で著作物の使用が許可されるようです。
ただし、原則として著作物の使用が無制限に許可されるものではなく、授業目的であれば学校等、営利目的でない教育活動に限り「文化長官の認めた補償金で利用でする」。ということです。また、2020年度においては特例的に「無償」で対応するそうですが、2021年度からはその限りではないようですので、著作物の取り扱いにおいては無制限に許可されているわけではありません。教育委員会や学校法人が著作権に関する補償金を支払っていれば授業の範囲において利用可能となります。「授業の範囲」について理解を深めるために本記事も是非参考にしてください。
また、著作権を著しく侵害する行為は授業目的の範囲を超えますので取扱いには十分に留意する必要があります。
良い例:教科書を画面に映し出すこと、ワークシートの類を送信し取り組ませること
悪い例:授業外でも活用可能性の高い一般著作物のデータを配布する
およそ教育の目的から外れていると思わしき範囲で著作権のある映画を放映する
音楽データの配布
(「この曲を歌います」とリアルタイムで流すことはおそらく大丈夫、保存できるデータとして配付するとNGかと思われます)
参考:授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)「授業目的公衆送信補償金制度」の概要
文化庁通知「著作権法の一部を改正する法律等の交付・施行について」
ワークシートの配付
教科書をはじめとする書籍の取り扱いについてはわかりました。では、通常なら授業中に配付していたワークシートなどはどうでしょう。教科書ガイドなどに附属しているものや個人や学校、教員の研究会などで作成した様々なワークシートが存在しますが、それらを活用するにはどうしたらよいのでしょうか。
まず、ワークシートについても著作権の考え方は変わりません。自分で作ったものであれば問題ありませんが、研究会などで作成した場合は使用しても良い旨は確認しておく必要があります(学校教育関連の教員団体であれば、大丈夫だとは思いますが)。
気をつけたいのは教科書ガイドなどに付属のワークシートです。これについてはどのような利用が許可されているかは教科書ガイドの出版社などに確認をとるのが良いかと思います。基本的には現行法では
- 学校内でのコピー利用は可能
- オンラインでは画面に映したり、コピーしたデータを共有フォルダやメールによる転送をすることは不可
となっています。ただし、ワークシートについては限定的に著作権をフリーにしている場合などもあり得ますので、著作者への確認が1番確実です。
これって著作権違反?
先に述べておきますが、私は法律の専門家ではないことと、著作権侵害は親告罪だということです。著作権の取扱いについては著作権者の訴えがあって初めて罪になることから、1番念頭に置いておきたいのは「著作者の権利を侵害したか」です。
オンライン授業を行うにあたって、教材・ワークシートの取扱いについては触れましたが、「勝手に映し込んだらダメ」なんて、そんなこと言われると他にも気になってきちゃいますよね。私ならこんなことが気になります。
BGMにかけてる音楽、教材としての音楽
あくまでオンライン授業という前提で話をしているので、まさか音楽の授業でもないのにBGMに音楽を流しながら授業をする場面というのは想像しにくいのですが、あり得ないかどうかはわかりませんので触れておきましょう。
もしかしたら特別支援対応なども考えられますしね。
参考までにこちらのリンクを貼っておきます。JASRACの教育機関におけるインターネット上での音楽利用についてです。
ご覧になりましたか?わかりましたか?
そうです。
「なんだ、『教育機関による利用』にあてはまる例なら○なんだ。」
…じゃないですよ?
めっちゃわかりにくいですが、これ、「ダメ」って書いてあります。
営利を目的としない教育機関がインターネット上でJASRACの管理楽曲を利用する場合、以下の手続きが必要となります。「教育機関」の使用料が適用になる(「教育機関」として手続きすることができる)配信とは、以下の3つの条件すべてに該当する場合です。
JASRAC「教育機関によるインターネット上での音楽利用」
つまり、「使用料を払ってくれたなら、教育機関としての範囲内でOK」「教育機関以外は金払っても論外な」ってことです。あなたの所属する教育機関(基本的に設置者である教育委員会)は使用料を支払っていますか?支払っていて、どの範囲の利用ならOKかの確認が取れているのであればオンライン授業で利用して構いません。
もし、使用料を払っていないのであればNGです。
世知辛いですね。
あ、当然ですが、これ、BGMだけじゃなくて音楽の授業としてもNG!ってことですよ。
さらに言うと、先生や生徒の演奏であっても既存の楽曲をオンラインで演奏することもサーバーに複製しているという概念から許諾が必要になるそうです。
不自由ですね。
ちなみに、コンテンツとして配信するのであれば以下のリストにあるサービスであればJASRACと利用契約を締結しているので「弾いてみた」なんかをアップロードすることは構わないそうです。
不自由ですね。
つまり音楽の授業はオンライン授業にするためにはハードルが高いということです。
背景に飾ってあるキャラクターのグッズ
コロナが収束すれば教室からの配信もあり得ますが、このまま外出自粛が長引くと自室から配信する可能性もなくはないですよね。また、教室で行うとしても教室にはどっかの出版社からいただいたキャラクター入りのポスターやカレンダーが掲示されているかもしれません。
自室なら背景に可愛い黄色いネズミのキャラクターや青いダルマみたいな猫型とは思えない何かが置いてあるかもしれません。
そうしたキャラクターグッズが映り込むのは問題ないのでしょうか。
これについては問題ないようです。著作権法については調べてもらえばいろいろと出てきますが、映り込みについては不自由すぎるということで平成25年に法改正され、そのキャラクターが主目的となっていなければ基本的には問題ないということになっているようです。
これで安心して黒い耳のネズミや青い服着たアヒルと一緒に授業ができそうですね!!
…
ちょっと待ったぁ!!
何度も言いますが、1番念頭に置いておきたいのは「著作者の権利を侵害したか」です。
某ディズ○ニー社みたいに権利に厳格なところはどういうでしょうか。
これが個人利用のオンライン通話なら流石に問題にはされにくいと思いますが、オンライン授業は個人で行うZOOM飲み会などとはちょっと違います。公的な、教育機関という団体としての配信になりますので、著作権について物も申す団体がいても何らおかしくありません。
ですので、くどいようですが、1番念頭に置いておきたいのは「著作者の権利を侵害したか」です。
まあ、そもそも授業しているんだからキャラクターが映り込む環境でするなよ。というのに異論はあまりないと思いますが、ケースバイケースで出したくなることもあるでしょう。気をつけておきましょうね。
板書やノートなどに手書きしたキャラクター
さて、ここまで来ればもうわかりますよね。板書などで手書きしたキャラクターは著作権違反になるのでしょうか。
答えは、「場合による」です。(おいっ!
というより、基本的にはNGなんです。これは手書きであっても複製権(著作物を複製する権利)の侵害です。ただし、非常に私的な場合はOK(というか私的な場合って親告できないので訴えようがないんです)ですが、オンライン授業は私的とは言えませんよね。
そういうわけで基本的には手書きであっても特定のキャラクターを手書きするのはNGです。よく黒板アートをSNSにあげる方もいますが、あれも版権キャラが使用されている場合はNGなんですよ。
SNSでも様々な描き手さんがイラストを描いてアップしていますが、あくまで文化振興や宣伝のための「黙認」であって、もし著作者が訴えたら著作者の勝ちです。
ところで、なぜ先ほど「場合による」と答えたのかといいますと、もう一度言いますね。
1番念頭に置いておきたいのは「著作者の権利を侵害したか」だからです。
権利の侵害をどう捉えるかはいろいろありますが、手書きであれば気になるのは「上手い・下手」でしょうか。
もちろん、実際には上手いも下手も関係ないんですが、「これはピカチュ○だ!」と言い張って書いたら下手でもピカチ○ウでしょう。また、その下手さが故に「イメージの侵害だ」と言われれば負けます。逆に上手すぎて「複製だ」と言われても負けます。ただ、問題は「言われるか」どうかです。
とはいっても、「これはピ○チュウだ!」と明言してしまえば、あなたの描いたその塊はまごうことなき○カチュウですが、言わなければ誰も…まあ、そんなこんなこのあたりはグレーってことにしておきましょうか。あくまで基本的にはNG!です。
大切なのは、「著作者の権利を侵害しない」と肝に銘じておくことですね。
オンライン授業で行うコミュニケーション
オンライン授業の制約
オフライン授業と違い、オンラインでのコミュニケーションは思いのほか制限が多く難解です。
さらにこのオンライン需要を受け、わけのわからないマナーまで横行してきています。間違っても学校の授業でわけのわからないオンラインマナーを捏造することがないようにしてください。
オンラインもオフラインも変わらず、人としての基本的な挨拶くらいにとどめておくべきでしょう。あとは相手の気持ちを考えて行動することが全てです。○○をしておけばいいということではないことはオンラインに限らず基本的なことでしょう。
さて、オンライン授業において、オフライン授業との違いに1番戸惑うポイントがこの「コミュニケーション」です。
オフライン授業なら、教室でいわゆる「空気感」を感じることができます。教室内で静かなほう、にぎやかな方、手遊びをしている気配、落ち込んでいる子へのちょっとした気遣いなど、様々なことをキャッチし、行動することができます。
しかし、オンライン授業であなたにできることはカメラの前で微笑んで語りかけることだけです。髪の毛1本触れることができません。
また、オンライン授業で「怒る」なんてことはまずできないでしょう。そもそも教育において「怒る」はほとんど使い道がないのですが、もしかしたら多くの先生がこの「怒る」を使えないことに戸惑いを覚えるのではないかと思っています。
オンライン授業で怒ってはいけない理由
そもそも「怒る」と「叱る」は違うのですが、ここでは一旦同じカテゴリだとして話しますね。何故一緒にするかはこれらは教師側からすると明確に意図が違うのですが、言われる側の子どもからするとその違いはほぼ無いからです。
そして、教室であればある程度は「怒る」「叱る」タイミングがありますが、教師ならば必ず「アフターフォロー」を講じるはずです。
しかし、オンライン授業であれば、できますか?アフターフォロー。
どうやって行いますか?
また、教室での叱り方は原則、「みんなの前で叱らない」です。子どもの自尊心を粉々にして、そこに成長はありません。自尊心を大切にしつつ、的確に過ちについて言及してあげるのです。
具体的には集団から取り出して(廊下に連れ出すなど)、個別に叱るべきです。
逆に誉めるときはみんなの前で誉めることも大切です。(これはオンラインでもできそうですね)
つまり、オンライン授業では気になる子どもに対するアプローチ方法が難しいのです。いろんなアイディアがありますが、絶対解はありません。まずは、怒らないでみんなを惹きつける方法を研究しましょう。
発表、一斉発言、個別対応
教室での授業であれば誰かを指名したり、一斉に発言させたり、個別に対応するなど、様々な関わり方が考えられます。しかし、オンライン授業だと、個別指名は可能ですが、一斉発言は音が割れて何を言ってるかさっぱりわからなくなるのがオチでしょう。
また、個別対応(例えば九九を一人ずつ聞いてあげるなど)をしようと思うと、その他大勢がどういった状態が望ましいのかが難しくなります。教室なら「○○しといて」で済むのですが、オンライン授業ならどうしますか?
個別対応中は誰かと1対1の状態になっている状態はまあ良いとしましょう。しかし他の子もオンラインではないですか?
その他の子をミュートする機能があるソフトウェアならそこは解決できるかもしれませんが、ミュートすると、オフライン授業(教室での授業)で例えるなら教室の外に全員を追い出すようなことになりかねませんか?
要するにミュート中は向こうがどんな環境でもこちらはわかりませんので、子どもは自分の番がくるまで歌っててもいいわけです。
やることやってればいいじゃないかという考えもあるでしょうし、私も個人的にはそういう考えですが、そうであればオンライン授業で一斉につながる意味とはなんでしょう?
それであれば、一斉授業の時間に区切りをつけてから個別に再接続するほうが良いかも知れません。また、できる限り個別対応は別の形でクリアできないか検討することも一つでしょう。
このことからも簡便に、手軽にオンラインで繋がれるということは重要な要素なのです。再接続の度にまどろっこしいのであれば個別対応もしたくなくなりますね。
また、個別対応をし始めると営業時間がエンドレスにもなりかねませんので、授業時間、個別対応時間、授業時間外の対応など時間に関しての取り決めをしっかりと準備する必要があるでしょう。
さらに、小学校低学年は難しいかも知れませんが、テキストチャットの有効活用も検討していく必要があります。オンライン授業とは「映像と音声」によるものという固定概念も取り払うべきでしょう。
オンライン授業で気をつけておきたいこと
セキュリティ対策
さあ、ようやくやってきました。セキュリティ対策。
ZOOMが何やら騒がしくなっていますよね。
セキュリティとひと口に言っても、何についてのセキュリティかというのもあります。例えばZOOMについては、
- 不審者(他人)が乱入できてしまう脆弱性
- カメラがハッキングされる脆弱性
- ログイン情報が漏洩する脆弱性
などが指摘されています(順次対応していくと発表されており、改善もされていっています)。
そうしたプログラム上のセキュリティ不備はありましたが、ZOOMは圧倒的な成長株でしょう。要はこれらは修正すれば改善される問題であることと、今回漏洩した情報がどこまで「実害」につながったのかということも関係していると思います。
確かにカメラをハッキングされのぞき見られるのは言語道断ですし、今後、この問題が放置されることはダメなんですが、早期に発見され改善されていくのであればこれ自体は大したこと(あるけど)ないんです。
それよりも教師がオンライン授業で気にすべきセキュリティはもっと別のところにあります。
それは子どもに対する発言や情報です。考えたくはないですが、オンラインで行っている以上、全生徒が自分の授業を録画していると思っておくくらいのほうがいいでしょう。
つまり、オンライン授業中に子どもに対し(もしくは第三者に対し)差別的な発言をした、配慮に欠いたなどは信頼関係が築けていなければ確実にスクショや動画クリップで漏洩されます。
もちろん、不用意に漏洩する側にも非はありますが、この場合、両成敗とならないで多くの場合が教師側が責められる形となって終わります。(これについては体罰動画の投稿などですでに明らかです)
つまり、発言や行動について今一度襟を正す必要があります。
また、個人情報の取り扱いなども同じです。住所や成績などの個人情報はもちろんですが、学校には「先生だから知っている」「同じ教室にいるから知っている」何か。が存在します。ときとして、それはクラス中では共有していて楽しめていても、それぞれの家族には秘密(サプライズなども含めて)ということがあるでしょう。
また、子どもは家と学校で違う顔をもっているものです。
クラスでの扱いをあまり家で知られたくないという(いじめとかではなく)子どもも多いでしょう。しかし、オンライン授業だと画面の向こうの子どもの近くに家族がいる可能性も高いです。みんなが自室があるわけではありません。
さらには家族の方が授業に参加しちゃうかもしれませんね(賛否についてはさておき)。
つまり、オンライン授業はどう考えても「教室」とは何もかもが違う環境なのです。場所が違えば配慮することも変わってきます。そうしたことも一種のセキュリティといえるのではないでしょうか。
オフライン(教室での授業)と違う!どうしたらいいの?
オンライン授業で大切なこと
さて、ここまでいくつかの観点からオンライン授業について考察してみましたが、いかがだったでしょうか。
オフラインとの違いに面食らったかもしれません。配慮すべきことだらけでがんじがらめじゃないかということも多かったですね。不安が増してしまったでしょうか?
しかし、逆に考えてみてください。
オフラインの授業は決して何も配慮することがありませんでしたか?
普段、ぼーっとしながらでもなんとかなったのでしょうか?
だとしたら、それは普段のほうを見直すべきかもしれません。
確かにオンライン授業は過去に例が少なく、不慣れな形式であることは否めません。しかし、場所が違えば特徴が異なるだけで、教師が守るべきもの、大切にするべきことは何ひとつ変わっていないはずです。
私個人の考えとしては、こうして枠組みが大きく変わることで全ての先生が教育の本質と向き合うことになり、大きく教育の質が向上するチャンスではないかと考えています(オンライン授業がいいという意味ではなく、きっかけとなって、オフライン授業にも還元されるという意味です)。
オンライン授業力
オンライン授業もオフライン授業も大切にすべきことは同じですが、コミュニケーションの方法などこれまでと違う事が多いため、必ずしもオフライン授業のうまさがオンライン授業で生きるとは限りません。
ポイントをしっかりと掴んでいる先生はどちらもそつなくこなすでしょうが、そういった先生は元々教育の本質をしっかり考えてこられた先生方でしょう。
是非、自分自身の教育力を大きく向上させる機会と捉えて、若い先生にこそ積極的に前向きに取り組んでもらいたいなと思います。
オンラインでも担任が指導する意味
さて、まとめです。
ここまでオンライン授業の課題やポイントを述べてきましたが、詰まるところオンライン授業の方法はどうすればいいのでしょうか?そもそも著作権も気になるし、コミュニケーションも制限されるなら一斉授業に特化して教えちゃえばいいわけで、優秀な先生の解説動画でいいんじゃないの?
そう思いませんか?林先生みたいな先生の動画が活躍するのはいつですか?今でしょ???
言うまでもないかもしれませんが、それらの優秀な動画教材は「知識を獲得する」というポイントにおいて、優秀な動画に過ぎません。また、万人に通用する解説動画というものは存在しません。
だからこそ、担任であるあなたが目の前の子ども達を任せられ、その責任を担うわけです。
最後に私の大好きなキャラクターの台詞を引用します。
この世に万病に効く薬なんてもんはありゃしないんだ。だから医者がいるんだよ。
Dr.くれは ワンピースより