新しい年度がスタートして、新しい学年も決まり、どのように最初の日を過ごそうかという思いが頭を駆け巡っている時期ではないでしょうか。
新しい学級ではこんなことをして、あんなことも用意して、学級通信を出してみようか、新しい当番を用意してみようか。毎日必ず小話をする先生になろうか。など、いろんな手法を調べてみては考えている時期かもしれません。
もちろん、学級経営に余裕が生まれて、慣れてきているのであれば、無理のない範囲でいろいろな工夫を取り入れるのも面白いでしょう。
しかし、それは教育の本質でしょうか。特に、若手の先生、新任の先生らは肩に力を入れすぎて、“なんか先生らしいこと”に踊らされていませんか?
今回は若い先生にこそ見て欲しい、学級経営において1番大切なことを重視した学級開きについて触れてみます。
1年間が最高だったと言えるクラスに
いきなり結論から入ります。ここでは本質にアプローチしていきたいので、目新しい、きらびやかな学級開きの形にばかり目を向けて、その先はなんとかなるだろう。という発想の提案はしません。
まずはゴールを定めましょう。
ゴールといっても、学校の先生が育てるべき子どもの姿とは明確に決められています。教育基本法第五条、学校教育法第二一条などに義務教育の目的として定義されており、学習指導要領にも「児童の人間として調和のとれた育成を目指し・・・」に始まり、指導要領全体を通して、具体的にその目指すべき姿が示されています。
先生は、このことをしっかりと確認した上で、子ども達一人ひとりが一人ももれなく成長していけるように関わっていく必要があります。
そのためには、先生であるあなたが「どんなことをしたいか」ではなく、子ども達にとって「どんなことが必要か」という点をしっかりと考えていきましょう。
黄金の3日間
黄金の3日間とか、1週間とか1ヶ月とか、とにかく最初が肝心だよとあらゆる書籍でも触れられていますし、大学でもそのように学んできたのではないでしょうか。
確かに学級開きの最初の時期はとても大切な時期です。子ども達も同級生や新しい教室にどきどきしながら、何より新しい担任との関係に不安を抱きながら進級してくるわけです。1年間の中で最も「この先生はどんな先生だろう」と興味を持っている時期ですから、ここでの印象がこれからに影響しないはずはないでしょう。
しかし、黄金の・・・に肩肘張りすぎて「ここできちんと仕掛けておかないと・・・」と思うと必ずといって良いほどコケます。黄金の時期とは「子どもと教師の信頼関係においての黄金期」であるということを忘れてはいけません。
新しい取り組みだとか、ルールだとか、そんなことは実は後からでもいくらでもできるのです。
むしろ、信頼関係をきちんと気づけたら新しい取り組みもよりスムーズに取り入れることができます。
先生自身が慣れていないことを慣れていない子ども達との間でスタートさせるべきではありません。
信頼関係の構築
黄金の数日間の間に新しい取り組みやルールはあまり取り入れないほうがいいとして、どんなことをするべきなのでしょうか。
「子どもと教師の信頼関係においての黄金期」にどのような信頼関係を築けるかどうかが大切なポイントです。
子ども達の力を伸ばす、子どもがより良く育つために最も大切なことは、子どもが安心して過ごせる環境を用意することです。
子どもにとっての教育環境とはなんでしょうか。教室や掲示物、学校の設備などはもちろん環境の一部ですが、最も重要な環境は先生自身です。1日の多くの時間を学校で過ごし、先生と関わる子どもにとって、先生の存在、言動、関わりはまさにその子を取り巻く環境そのものなのです。
つまり、先生を信頼し安心して学ぶことができるかどうかが教育環境として最も重要なのです。
学級開きに確認したい3つのポイント!
1.フレッシュな気持ちで楽しい初日!
あれやこれやと詰め込みすぎて意外と疎かにしがちなポイントですが、初日の印象作りはとても大切です。1年間のルール作りより、先生自身の印象が子ども達にとってどうであったかが、1年間の信頼の基盤になります。
特に、子どもはもちろん、保護者との信頼を作る上でも、初日の先生の印象は欠かせません。
学級開きの日は自分が担当する学級について春休み中から準備していた担任と違い、子どもや保護者にとっては初めて「担任が誰か」がわかるドキドキの日です。多くの家庭で「何先生だった?」「新しいクラスはどう?」と会話がはずみ、そのときの子どもの発言で保護者への第一印象が決まってしまうのです。
この印象というのは非常に難儀で、家庭で一度子どもの口から出た発言は、子どもが明確に保護者に対して撤回しない限り保護者の中に強く残るのです。
また、子どもの語彙は6年生であっても意外と少ないため、こちらの意図するニュアンスはほとんど伝わりません。
「新しい先生、おもしろかった!」「楽しそう!」「怖そう」「明るい」「暗い」「厳しい」・・・そんなところでしょうか。あとは、考えたくないですが、もっとネガティブなキーワードがでるか、逆に好印象で今日の具体的なエピソードが話題に上るかのどちらかでしょう。
2.委員・係・当番決めなどの特別活動で子どもの活動の基礎づくり
学級開き当日から数日中に多くの学級では委員(高学年)・係活動、当番活動を決める学級会がもたれるでしょう。
新学期の始めの恒例行事となっているかと思いますが、この時間をあなたはどのように使っていますか?
特別活動の目的に照らして有効に活用できているでしょうか。
スムーズに流すことに意識を向けすぎて係を決めるルールを固めすぎていると特別活動としての価値が半減してしまいます。主体性を尊重し、対話的な活動を通して深い学びを得るための活動として、特別活動を設定しましょう。
委員会活動
児童会活動、委員会活動というのは、誰かがやらなければならないからやっている仕事ではありません。ここを誤魔化しては意味がありません。実は委員会活動はなくても誰も何も困らないのです。
誰かがしなければならないから仕方なく高学年がやる。のではなく、児童が主体的に組織し、学校生活を充実させるために行う活動です。また、異学年(主に高学年)で組織し活動していくというのも特徴です。
惰性で決めて、することを担当教員が指示してさせるのであれば全く無意味な活動になります。そのことをしっかりと子ども達に伝え、自発的に取り組めるよう働きかけましょう。
所属する委員会の決め方も同じです。機械的に決めるのではなく、子ども達が主体となって自分達で考え、お互いに尊重し合い決めていく活動にしましょう。
係活動
係活動は委員会と違い、学級生活の充実を目的とする活動です。子ども達が学級生活を送る上でより良い生活が送れるように自分達の学級環境に働きかけていくことが係活動の目的になります。
先生が楽をしたいからとか、こういう係は常にあって、私のクラスはこの係を活用して成り立っているというような状態になっていないでしょうか。
係活動は先生の便利屋ではありません。また、委員会活動と違い、学級毎に独自の係を設定できることから、子ども達が有益と思える活動について話し合い、前向きな気持ちで係活動に取り組めるように働きかけましょう。
当番活動
当番活動(日直・日番、掃除当番、給食当番)は誰かがやらなければ困るような仕事です。委員会や係活動のような+αの目的とは少し毛色が違いますね。どの子どもにも関わりが深い事柄について、誰かがやらねばならないし、負担も決して軽くないことについては誰かに仕事が偏らないように当番活動として全員に割り振ります。
ちなみに、給食や清掃については、委員会活動や係活動などと同じ特別活動ではありますが、その中でもそれぞれ目的が違う活動として別に定義されています。そのため、掃除当番や給食当番の取扱いについても係活動とは一線を画すものとして取り扱うべきでしょう。
簡単に述べると、委員会活動や係活動は子どもたちの働きかけにより課題を解決し、学校・学級生活をより良くしようとする主体的な活動です。
それに対し、清掃活動は校内美化、給食指導は食育活動の一環であり、とりわけ給食当番は「共同作業を通して奉仕や協力・協調の精神を養う」と学習指導要領に記載されているようにそれぞれ奉仕活動として定義されています。
そのため、清掃当番や給食当番の仕組みはあまり子ども達に自由度を与えず、教師側でほとんどを組んでしまうことが多くなるわけです。
各活動のグループの分け方、子ども達が主体的に話し合って決める流れを作る方法などについては教師塾EduKで具体的にお伝えします!是非、ご参加ください!!
明日からの学級経営が楽しくなる教師塾「EduK」
新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で開催を見合わせています。
3.どんなことを大事にするかのお話
細かなルールをこちらで決めて最初に伝えるよりも、先生として自分が大切にしたいことを伝えることが重要です。
主体性が十分に身についた先には本来ルールも必要無いはずです。子ども達が各々に考え行動ができるゴールを目指すならば、最初にルールでがんじがらめにしてしまうのは百害あって一利無しと言っても過言ではないでしょう。
特に学級開きの黄金の期間はあれやこれやと細かなルールを伝えるより、先生がどういった判断基準で物事を考え、評価しているのかというぶれない筋道を伝える方が効果があります。
ルールは目的があってこそのルールです。ルールが目的にならないように注意しましょう。また、その時々に応じて、善悪の判断をできるように常に判断基準を明確にしておくことも必要です。
そして、その判断基準を逸脱していないときは、いくら気に食わなくてもむやみに怒ったり叱ったりしないようにしましょう。子ども達は成長過程です。失敗を叱責するのではなく、許し、見守れる教師でありたいですね。
ポイントは“1年間、ブレないこと”です。ブレない判断基準を貫ければ子ども達が自ずと担任の価値基準を取り入れることができ、子ども達も活動がしやすくなるでしょう。
子ども達が生き生きと学校生活を送るためには活動しやすい環境が重要です。